世界から学ぶ #017:誤解 ― ブルース・ウィリスの教訓
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2022年、俳優ブルース・ウィリスさんが失語症(Aphasia)を公表しました。
そして翌2023年、その原因が前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)であることが発表されました。
世界中で大きく報道されましたが、この出来事は私たちに「認知症とは何か」を改めて考えさせてくれました。
誤解①: 認知症は「物忘れ」の病気である
認知症と聞くと、多くの人が最初に思い浮かべるのは「記憶がなくなる病気」です。
もちろん、それはアルツハイマー型認知症では代表的な症状です。
しかし、認知症にはさまざまな種類があります。
ブルース・ウィリスさんが診断された前頭側頭型認知症では、
- 言葉が出にくくなる
- 会話が続かなくなる
- 判断力や社会性が変化する
- 性格が変わったように見える
といった症状が、記憶障害より先に現れることがあります。
つまり、
認知症=物忘れ
ではないのです。
誤解②: 性格が変わっただけ
家族は、
「最近怒りっぽい」
「空気が読めなくなった」
「同じ失敗を繰り返す」
そんな変化を目にすると、
「年を取ったから」
「頑固になった」
「性格の問題」
と思ってしまいがちです。
しかし、その背景には脳の病気が隠れている場合があります。
本人を責める前に、
「何か理由があるのではないか」
と考えてみることが、とても大切です。
誤解③: 本人も同じように困っている
介護をしていると、
「どうして分かってくれないの?」
と思う場面があります。
しかし前頭側頭型認知症では、自分の変化を自覚すること自体が難しくなることがあります。
本人は困っていないように見える一方で、家族だけが苦しんでいるように感じることも少なくありません。
だからこそ必要なのは、
説得することではなく、
理解しようとする姿勢です。
誤解④: 認知症になったら人生は終わり
ブルース・ウィリスさんの家族は、病名を公表した後も、家族全員で本人を支え続けています。
特に印象的なのは、現在の妻だけでなく、元妻であるデミ・ムーアさんや娘たちも協力し、一つのチームとして支えていることです。
認知症になると、失うものばかりが注目されます。
しかし、
- 家族との時間
- 笑顔
- 安心できる暮らし
- 人とのつながり
こうしたものは、病気になっても失われるわけではありません。
周囲の理解によって、その人らしい生活は続けることができます。
世界から学ぶ近年、世界の認知症ケアでは、
「認知症を見るのではなく、人を見る」
という考え方が広がっています。
症状だけを見るのではなく、
その人の人生、
その人の気持ち、
その人らしさを大切にする。
イギリスのパーソン・センタード・ケアや、
フランスのユマニチュードも、この考え方を土台としています。ブルース・ウィリスさんの公表は、有名人の病気というニュースではなく、
私たち自身の「認知症への誤解」を見つめ直す機会だったのではないでしょうか。
認知症で変わるのは「その人」ではありません。変わるのは脳の働きです。
その違いを理解したとき、私たちの接し方も大きく変わります。
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