世界から学ぶ #014:共感 ― Over-validating
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共感しすぎる介護
― 認知症ケアで「否定しない」はどこまで必要なのか
認知症ケアでは、「本人を否定しないこと」が大切だと言われます。
アメリカなど欧米の認知症ケアでも、Validation Therapy という考え方があります。これは、本人の言葉を頭ごなしに訂正するのではなく、その奥にある不安や寂しさ、怒りを受け止める方法です。
しかし、ここで一つ注意したいことがあります。
「否定しない」ことは、「何でもそのまま肯定する」ことではありません。
Validation とは何か
Validation Therapy は、認知症の方が見ている世界や感じている感情を尊重するコミュニケーション方法です。
たとえば、本人が
「家に帰りたい」
と言ったとき、
「ここが家でしょ」
と訂正するのではなく、
「家に帰りたいと思うくらい、不安なんですね」
と感情に寄り添います。
大切なのは、言葉の事実関係ではなく、その奥にある気持ちです。
Over-validating とは何か
一方で、共感が行き過ぎると、かえって本人の不安を強めてしまうことがあります。
たとえば、本人が
「財布を盗まれた」
と言ったとき、
「盗まれていません」
と否定すると、本人は責められたように感じるかもしれません。
しかし、
「本当に盗まれたんですね。ひどいですね」
と事実として肯定してしまうと、
本人の中で「やはり盗まれたのだ」という不安が強くなることもあります。
これが、ここでいう「共感しすぎる介護」です。
感情は受け止める、事実は強めない
欧米の認知症ケアから学べるのは、
本人の感情を否定しないことと、
本人の誤った認識をそのまま強化しないことのバランスです。たとえば、
「財布を盗まれた」
と言われたら、
「それは心配ですね。一緒に探してみましょう」
と返す。
「家に帰りたい」
と言われたら、
「帰りたくなるくらい落ち着かないんですね。少し一緒に座りましょう」
と返す。
本人の感情には寄り添いながら、怒りや不安を増幅させない方向へ会話を進めます。
日本でも参考になること
日本でも「否定しない介護」はよく言われます。
しかし、それがいつの間にか、
「本人の言うことに全部合わせなければならない」
という負担になってしまうことがあります。
本当に大切なのは、事実を合わせることではなく、感情を受け止めることです。
本人の世界に入ることは大切です。
しかし、その世界の不安をさらに大きくしないことも、同じくらい大切です。
今日のまとめ
認知症ケアにおける共感は、相手の言葉をすべて肯定することではありません。
その言葉の奥にある、
- 不安
- 寂しさ
- 怒り
- 安心したい気持ち
そこに目を向けることです。
世界から学べるのは、共感の技術だけではありません。
共感にも、ちょうどよい距離がある。
その視点も忘れずに・・・
世界から学ぶ世界には、同じ悩みに向き合いながら工夫を重ねている介護者がいます。
このシリーズでは、その知恵を日本の介護にも役立つ形で紹介していきます。