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総患者数:5,500万人(推定)
  • 🌱00:認知症を知る ― はじめに|介護の前に

    認知症ケア 介護 出発点
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    介護の技術は、認知症の本質を知った後に初めて意味を持ちます。 「何度説明しても分かってくれない。」 「また同じことを聞かれた。」 「財布を盗んだと疑われた。」 「昨日は普通だったのに、今日は別人のようだ。」 認知症の方を介護していると、多くの人が一度は経験する場面です。 そして、そのたびに私たちは考えます。 「どうすれば伝わるのだろう。」 「もっと良い介護の方法があるのではないか。」 「私の接し方が悪いのだろうか。」 だから本を読み、インターネットで調べ、介護の技術を学びます。 もちろん、それは決して間違いではありません。 しかし、ここで一つ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。 介護の技術は、誰に対して使うものなのでしょうか。 私たちは、自動車を運転するときには、その車の特徴を知ろうとします。 パソコンを使うときには、その仕組みを知ろうとします。 ところが認知症介護になると、技術だけを先に学ぼうとしてしまうことがあります。 しかし、本当に大切なのは、その前に認知症という病気を知ることです。 認知症とは、どのような病気なのか。 脳では何が起きているのか。 本人はどのように世界を見ているのか。 それを知らなければ、どんな介護技術も「なぜそれが有効なのか」が分からないままになってしまいます。 例えば、認知症の方が、 「財布を盗まれた。」 と言ったとします。 私たちは、 「違いますよ。ここにありますよ。」 と説明します。 それでも納得してもらえず、 「ほら、ここにあるでしょう。」 「さっきも説明したでしょう。」 と繰り返してしまうことがあります。 すると、本人はさらに不安になり、怒ってしまうことさえあります。 これは、介護が下手だからではありません。 本人が頑固だからでもありません。 認知症によって、私たちとは違う形で世界を認識し、理解しているからです。 もし、そのことを知らずに介護をすれば、一生懸命であるほど、お互いに苦しくなってしまいます。 近年、「パーソン・センタード・ケア」や「ユマニチュード」など、さまざまな介護の考え方が紹介されています。 どれも素晴らしい取り組みです。 しかし、それらに共通しているのは、介護技術そのものではありません。 その人が何を感じ、何を見て、どのように世界を受け止めているのかを理解しようとする姿勢です。 つまり、介護の出発点は技術ではなく、理解の前に、「知ること」なのです。 このシリーズでは、介護者の立場から「認知症とは何か」を一緒に見つめ直していきます。 専門的な医学書のような難しい話ではありません。 毎日の介護の中で感じる、 「なぜ?」 という疑問に、一つずつ答えていきたいと思います。 このシリーズでお伝えすること 第1回 認知症は「物忘れ」の病気だと思っていませんか? 「認知症=物忘れ」という、多くの人が持っているイメージを見つめ直します。 第2回 認知症にも「性格」があります アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症。それぞれ何が違うのかを紹介します。 第3回 認知症は、がんのようには進行しません 良い日と悪い日がある理由や、体調や環境が認知機能に与える影響を考えます。 第4回 MRIでは分からないことがあります 画像検査だけでは見えない認知症の特徴と、介護者だからこそ気づける変化についてお話しします。 第5回 認知症介護で本当に大切なこと 認知症を知った上で、介護者は何を大切にすればよいのかを一緒に考えます。 認知症を知ることは、介護を知ることでもあります。 このシリーズを読み終えたとき、認知症という病気を見る目が少し変わり、目の前の大切な人との向き合い方が、ほんの少しでも穏やかなものになっていたなら、これほど嬉しいことはありません。 介護は、技術だけでは成り立ちません。 相手を知ろうとすること。 そこから、すべての介護は始まるのだと私は思います。 その第一歩として、このシリーズが少しでもお役に立てれば幸いです。 次回は、 「 01:認知症は「物忘れ」の病気だと思っていませんか? 」 について、一緒に考えていきます。 関連記事 世界から学ぶ #016:イギリス 「社会的処方」 世界から学ぶ #005:フランス 「ユマニチュード」