認知症の対応や介護において、世界をリードしている先進的な国はいくつかあります。それぞれの国が「医療と福祉の分離」「孤立させないコミュニティ」「人権の尊重」といった異なるアプローチで独自の強みを持っています。
代表的な先進国とそのユニークな取り組みを解説します。
1. スウェーデン:世界に先駆けた「福祉シフト」と専門ケア
1970年代に世界で最も早く高齢社会を迎えたスウェーデンは、医療中心から「生活を支える福祉中心」への転換をいち早く成し遂げました。
オムソーリ(Omshorg)精神:
スウェーデン語で「悲しみや幸せを分かち合う」という意味を持つケア概念です。すべてを先回りして世話するのではなく、本人ができることを奪わない「自立支援」を徹底しています。
国家資格「シルヴィア在宅介護士」:
国王妃の財団が認定する認知症ケアの高度な専門資格があり、科学的根拠に基づいたケアが介護現場や在宅に浸透しています。また、認知症にかかる費用の大半(約85%)が医療ではなく福祉・生活支援に充てられているのも特徴です。
2. オランダ:革新的な「認知症専用の村」と社会実験
オランダは、従来の「施設に隔離する」という概念を覆す独創的なモデルで世界中から注目されています。
ホグウェイ(Hogeweyk)「認知症の村」:
アムステルダム郊外にある、広大な敷地全体がひとつの「村」になっている認知症患者専用の画期的な施設です。敷地内にはスーパー、カフェ、映画館、美容室などがあり、住民(患者)は鍵のない生活空間を自由に歩き回ることができます。
日常を演じるスタッフ:
お店の店員や街の住民に変装した介護・医療スタッフが自然に配置されており、患者は「監視されている」と感じることなく、これまでのライフスタイルを維持したまま安全に暮らせます。
3. イギリス:国家戦略としての「コミュニティ化」
イギリスは2009年に「認知症国家戦略」をいち早く策定し、国際社会の認知症対策を政治的にリードしてきました。
メモリーサービス(初期連動システム):
地域の家庭医(かかりつけ医)と専門病院が密に連携し、認知症の疑いが出た段階ですぐに血液検査やMRIなどの精密検査と診断・ケアへと繋ぐ仕組みが定着しています。
認知症フレンドリーコミュニティ:
街の商店、銀行、公共交通機関のスタッフが認知症への対応を学び、社会全体で患者の外出や買い物をサポートする街づくりが全土に広がっています。
4. フランス:人間らしさを取り戻す技術の発祥
フランスは、現代の日本でも広く導入されている革新的なケア技法を生み出した国です。
ユマニチュード(Humanitude)の確立:
フランスの体育学専門家らが開発した、認知症ケアのコミュニケーション技法です。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱を基本とし、患者を「拒絶しない」「1人の人間として対等に接する」ことで、BPSD(周辺症状と呼ばれる興奮や徘徊)が劇的に落ち着くことが科学的に証明されています。
実は「日本」も世界屈指の先進国
世界最大の超高齢社会である日本は、2000年に始まった「介護保険制度」や、2,000万人近くが受講した「認知症サポーター養成講座」、そして近年施行された「認知症基本法(共生社会の実現推進)」など、地域密着型の包括ケアシステムとバリアフリー化において、海外から見本とされる立場でもあります。
各国は、認知症を「病院で治療する病気」としてではなく、「その人がその人らしく、地域の中で最期まで生きるための環境づくり」という共通のゴールに向けて取り組んでいます。
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