🕵️♀️認知症が死因のトップ?直接的な死の引き金は?
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「認知症が死因のトップになった」というニュース(国内外の共同研究チームによる『世界の疾病負荷研究』などの分析結果)は、インパクトが大きかったですよね。それまで上位だった脳卒中や心疾患の管理が進んだこと、そして超高齢社会で認知症を抱える人が増えたことが背景にあります。
ただ、「認知症という病気そのものが直接の引き金となって心臓を止める」わけではありません。
実際には、脳の神経細胞が壊れていくことで身体をコントロールする機能が失われ、それに伴う「合併症」や「身体の衰弱」が直接的な死の原因となります。具体的には、主に次の4つの要素が直接の死へとつながっていきます。
1. 嚥下(えんげ)障害による「誤嚥性肺炎」
もっとも多い直接的な死因の一つです。
- 仕組み: 脳の萎縮が進むと、食べ物や唾液をうまく飲み込むための神経の指令が出せなくなります(嚥下障害)。その結果、食べ物や唾液が誤って気管や肺に入ってしまい、そこに細菌が繁殖して激しい肺炎を引き起こします。
- 繰り返すリスク: 一度治っても、飲み込む力自体が回復しないため、何度も誤嚥性(ごえんせい)肺炎を繰り返し、徐々に体力を奪われて致命傷になります。
2. 脳の司令塔機能の喪失による「衰弱(餓死・脱水)」
末期になると、人間の生命維持に関わる根本的な欲求や機能が失われます。
- 仕組み: 「お腹が空いた」「喉が渇いた」という感覚そのものを脳が認識できなくなったり、目の前にあるものが食べ物だと理解できなくなったり(失認)します。また、咀嚼(そしゃく・噛むこと)の仕方を忘れてしまうこともあります。
- 結果: 無理に食べさせようとしても、体が受け付けなくなり、栄養失調や脱水症状が進んで全身の臓器が静かにシャットダウンしていきます。
3. 活動量の低下に伴う「寝たきり・感染症」
認知症が進行すると、歩き方やバランスの取り方を忘れ、最終的には寝たきりの状態になります。
- 仕組み: 筋肉や関節が凝り固まり、自力で寝返りを打つこともできなくなります。
- 結果: 体重がかかり続ける部分の皮膚が腐ってしまう「褥瘡(じょくそう・床ずれ)」ができ、そこから細菌が血液に入り込んで全身に回る「敗血症(はいけつしょう)」を起こしたり、尿道カテーテルなどから「尿路感染症」を起こして重症化したりします。
4. 自律神経の乱れによる「突然死・心不全」
脳の萎縮は、思考や記憶のエリアだけでなく、呼吸や血圧、体温をコントロールする「自律神経の司令塔」にまで及びます。
- 仕組み: 体温調節がうまくできなくなって急激な高熱を出したり、血圧や心拍数のコントロールが利かなくなったりします。これにより、ある日突然、心不全や呼吸不全を引き起こすことがあります。
【補足】日本の公的な統計(厚生労働省)との違い
厚生労働省が毎年発表する「人口動態調査」の死因順位では、いまだに「がん」「心疾患」「老衰」がトップ3で、認知症は上位に出てきません。
これは、日本の医師が死亡診断書を書く際、直接の死因となった「誤嚥性肺炎」や、天寿を全うしたという意味での「老衰」と書くケースが圧倒的に多いためです。
一方で、今回の「認知症が1位」という研究は、「肺炎や老衰で亡くなったけれど、その根本的な原因(原死因)を遡れば認知症だ」という視点でデータを再解析したため、このような結果になっています。認知症の終末期は、ガンのような激しい痛み(癌性疼痛)を伴うことは少ないですが、脳が徐々に生命のスイッチを切っていくように、ゆっくりと全身の機能がフェードアウトしていくのが特徴です。